みほようこ 童話
「かきつばたになった少女」
昔、昔、ずぅーと昔。
神様が私たち人間と同じ国に住んでおられた頃のお話です。
八ヶ岳のふもとの高原には、おおぜいの女神さまたちが住んでいました。
その中に、「かきつばた」という名前の、美しい少女がいます。
かきつばたは、ある神様の一人娘でした。
神様は、たった一人の娘を、宝物のように大切にしています。
女神さまたちは、みんな美しいかたばかりでしたが、かきつばたの美しさは格別でした。
黒い長い髪、すきとおるような白い肌、小さなかわいいくちびる、
うっすらと紅をさしたようなほお、すらりとした体、澄んだ清らかなひとみ。
かきつばたのひとみは、いつもきらきら輝いていました。
かきつばたをみた人は、あまりの美しさにびっくりしました。
「なんて美しい少女だろう。この世にこんな美しい少女がいるのだね」と。
かきつばたは、姿が美しいだけでなく、笑顔のすてきな、心のやさしい少女でした。
かきつばたのそばにいると、どの人もほっとし、心がなごみました。
そんな少女だったので、神様や女神さまたちから、「かきつばた、かきつばた」といって、
かわいがられています。
「この間、霧が峰へ行ったら、女神さまのように美しい人たちに出会った。
その中に、とてもかわいい少女がいたよ」
「霧が峰へ行くと、かわいい少女に会えるそうだ。その少女の名前は、かきつばたというらしい」
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