みほようこ 童話
「明神さまの姿をみた少女」
明神さまは、狩猟の神さま・農耕の神さま・風の神さまともいわれ、
大昔からずっと諏訪の地をおさめてこられた、偉大な神さまでございます。
その明神さまへ、雨の日も風の日も雪の日も、一日も休まずおまいりにくる
心のやさしい少女がおりました。
少女には、心を病んでいる兄がいました。
「兄ちゃんが一日も早く良くなりますように。
兄ちゃんが、心のやさしい、おだやかな人になれますように」
少女は、明神さまに毎日兄のことをお願いしていたのです。
少女が明神さまへ千回目のお参りに行った日。
ひとっこ一人いない静かな境内を、ぴゅーと心地よい風が通りすぎていきました。
「なんて気持のよい風だこと」
少女がそうつぶやいた時、社の方からおごそかな声が聞こえてきました。
「おまえは兄思いのやさしい少女じゃのー。兄の病気はじきによくなるだろう。
いつまでも今のやさしい気持をわすれずに生きていくのじゃよ。
わしは時々少年の姿になって、諏訪の地をあちこちみて歩いているので、
おまえのことも兄のこともよーく知っているぞ。
これからも兄と仲良くするのじゃよ」
その声は、いつかどこかで聞いたことがあるような、なつかしい声でした。
少女は、少年の姿になっているという明神さまに直接あい、
病気の兄のことをお願いしたいと思いました。
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