みほようこ 童話




「風の神様からのおくりもの」


五月十日。

からりと晴れたさわやかな日でした。

「ぴゅー、ぴゅーー」

気持の良い風が、諏訪盆地を通りすぎていきます。

風の神様はいつものように諏訪湖のまわりをひとまわりして、

たったいま社に帰ってきた所です。

「今日も一日無事に終わりそうじゃな。さて、わしもひとやすみするか」

神様は、境内の切り株に腰をおろしました。

「たっ、たった。たっ、たった」

誰かが足早に歩く音が聞こえてきました。

「誰じゃろう。ひどくあわてているようじゃが、

何事もなければいいがのー」

神様は、ぐるりとあたりをみまわしました。

しかし、誰もいません。

「風の神さま、風の神さま。小桜でございます。

たった今、伊那谷に女の子が生まれたのですが、おぎゃーと泣きません。

その子は、私の国から、ある大切な使命を持って、そちらの国へ行った者です。

風の神様、お願いです。どうかその子を・・・・・・、

どうかその子を助けてくださいませ」

その声は、小桜姫でした。

「あのおしとやかな小桜姫が、こんなにあわてているようでは、

よほど急をようするようじゃな」


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