ふしぎな鈴




「校長先生と桜の鈴」


それから何ヶ月か過ぎました。

かなは一年生になりました。

かなの小学校へ、長いひげの校長先生がふにんしてきました。

小柄な色黒の先生でした。

先生のひとみは温かく、いつもきらきらと輝いていました。

かなは校長先生が大好きでした。

かなだけでなく、こどもたちはみんな校長先生が好きだったのです。

校長先生は、毎朝校門の前にたって、こどもたちを迎えます。

「かな、おはよう。元気かな」

「まさし、おはよう。かぜはもうよくなったかな」

校長先生は、こどもたち一人ひとりに、やさしく声をかけます。

かなは校長先生の「おはよう」という声を聞くと、

心の中がぱっと明るくなるような気がしました。

校長先生は、まわりにいる人々を、元気にしてしまうふしぎな人でした。。


五月初めの日曜日。

かなは愛犬の”りゅう”と、丘の上の桜をみに行きました。

「ホーホケキョ、ホーホケキョ」

どこからかうぐいすの声が聞こえてきました。

「りゅう、うぐいすだよ。良い声だね」

かなは、りゅうに話しかけました。

「どこで鳴いているのかしら」

かなはあたりをみまわしました。

すると、目の前の木に、うぐいすがとまっています。

「ホーホケキョ、ホーホケキョ」

かなが近づいても、うぐいすはにげません。

うぐいすは、かなを案内するかのように、かなの前をとんでいきます。

「ふしぎなうぐいすだな」

かなはそう思いました。

うぐいすに案内されて丘へつくと、桜が美しく咲いていました。

そして、桜の木の下には、校長先生が立っていました。

「美しい桜だねぇ」

校長先生はにこにこしながらいいました。

かなは、おとうさんから聞いた小桜姫の話を、校長先生に話しました。

校長先生はその話を知っていましたが、「ほうー」「それで」

「それからどうしたの」といいながら、かなのたどたどしい話を、最後まで聞いてくれました。

話し終わったかなは、おとうさんからもらった桃の鈴を、校長先生にみせました。

「リーン、リーン、コロンころん」

「リーン、リーン、コロンころん」

鈴の音を聞いた校長先生は、はっとしました。

「私はどこかでこの鈴の音を聞いたことがある。どこで聞いたのだろうか?」




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