ふしぎな鈴
「プロローグ」
小高い丘にのぼると、目の前に南アルプスの山々が美しくみえます。
山深いこの町にも、ようやくあたたかな春がやってきました。
丘の上の桜が、今年も美しく咲きました。
かなは丘へ着くと、桜の木の方へ走って行きました。
そして、ポケットから桜の鈴をとりだし、静かに鈴をふりました。
「リーン・リーン・リーン・・・」
すんだ音色が、あたりにひびきわたります。
「かなさん、ありがとう。今年も忘れずに会いにきてくれたのね。うれしいわ」
桜の花が、笑顔でかなをむかえました。
「今年もきれいに咲いたのね」
かなは、そっと花のにおいをかぎました。
桜の花の香りが、あたりにぷーんとただよいました。
大好きなおとうさんなくなった年の春。
かなはおとうさんといっしょに、この丘へ桜の花をみにきました。
桜の花が美しく咲いていたのを、今でもはっきりおぼえています。
その時、おとうさんはかなに小桜姫の話をしてくれました。
小桜姫が大切にしていた、二つの鈴のお話です。
「そんな鈴があったらいいなぁ。大好きな小鳥や花とお話ができるなんて、さぞ楽しいだろうな。
小桜姫さまのように、私も小鳥や花とお話をしてみたい」
かなはそう思いました。
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