ふしぎな鈴




 「お月さまの耳かざり」


秋のある日。

かなはりゅうといっしょに、散歩に行きました。

りゅうは散歩が大好き。

かなの顔をみると、「散歩に行こう、散歩に行こう」と、大声でさいそくします。

かなとりゅうは、いつもの道を走ったり、歩いたり、休んだりしながら散歩しました。

細い道のまわりには、ずっとたんぼが続いています。

たんぼにはかりとったばかりの稲が、はざ(稲を干すためのたな)にかけてありました。

はざのまわりを、赤とんぼがすーいすーいと飛んでいます。

雲ひとつないまっさおな西の空が、だんだんにうすいクリーム色に変わってきました。

かなとりゅうは、たちどまって西の空をじっとみていました。

すると、空の色が、うすい橙色から、濃い橙色になりました。

「なんてきれいだろう」

みていると、もっと美しいあかね色になりました。



どの位の時間が過ぎたのでしょうか。

気がつくと、あたりはうす暗くなっていました。

うす暗くなった道を、かなとりゅうは、家にいそぎました。

長い坂道をのぼり、平らな道にでた時、空にはもうお月さまがでていました。

今日のお月さまは、細い三日月です。

その時、お月さまにむかって、きらっきらっと光りながら、

星が近づいてくるのをみつけました。

その星は、だんだんにお月さまに近づいてきます。

あの星はたしか金星、よいの明星とか、明けの明星とかよばれている星です。

「お月さまと星が、衝突するのではないかしら」

かなは心配になりました。

「あっ、たいへん!」

かなが大声でさけんだ時、

お月さまの耳のあたりに、金星がぴたっとつきました。

「わぁー、お月さまの耳かざりみたい。すてきだわ。

私もあんな耳かざりがほしいなぁ」

すると、どこからか声が聞こえてきました。

「かな、この星の耳かざりをあげよう。

この耳かざりをつけるとね、どんな願い事でもかなうのだよ。

ただし一回きりだけれどね」

その声は、どこかで聞いたことがあるような、なつかしい声でした。

「誰だろう?」

あたりをみまわしましたが、誰もいません。

空をみあげると、お月さまがにっこり笑っていました。

「あっ!」



つづく


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