ふしぎな鈴




「小桜姫とふしぎな鈴」


しかし、たくさんすぎて、幼い姫には数えることができませんでした。

「ねえ、おとうさま。花はいくつ咲いているの?」

「ニ百位は咲いているだろう」

おとうさんはうれしそうにいいました。



姫が七才になった春のある日。

庭の桜が満開になりました。例年になく、美しい桜でした。

「今年の桜は、みごとじゃのぅ」

おとうさんはごきげんでした。

「姫、いいものをあげよう。この鈴は、わが家に伝わっている鈴だよ」

おとうさんは木箱に入った二つの鈴をくれました。

その鈴は、諸国を旅していた坊さんが、大江家に泊まった時、お礼にくれたものでした。

「この鈴を大切にするように」

そういって、坊さんは立ち去ったそうです。

一つは、桜の花びらで囲まれた中に、小さな鈴が入っていました。

「リーン・リーン・リーン」

鈴虫が鳴いているような、澄んだ音色の鈴でした。

姫はこの鈴がお気に入りで、なくなるまで大切にしていました。

  もう一つの鈴は、桃の実の形をしていて、中に入っている鈴も、少し大きめです。

「リーン・リーン・コロンころん」

なんともいえない良い音がします。

和紙でできていて、あどけないこどもの顔がかいてありました。


姫が十才になった春のある日。

姫は庭へでて、満開の桜をじっとながめていました。

そして、おとうさんからもらった桜の鈴を、何回かふってみました。

「リーン・リーン・リーン・・・」

姫が七回鈴をふった時、どこからか話し声が聞こえてきました。

「誰だろう?」

あたりをみまわしましたが、誰もいません。

じっと耳をすませて聞いていると、桜の花がこんなおしゃべりをしていました。

「小桜姫さまってね、・・・女の子だけど・・・小鳥やちょうが・・・大好きなんですって」

「そういえば・・・姫のおとうさまも・・・小鳥が好きですものね」

「そうそう、小桜姫さまはね、・・・不思議な鈴を・・・もっているですって」

「不思議な鈴って・・・どんな鈴なの?」

つづく

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