ふしぎな鈴




「小桜姫とふしぎな鈴」


今からおよそ五百年前。

小桜姫は、相模の国・鎌倉で生まれました。

姫の生家は、大江といいます。大江家は大昔からずっと続いた旧家でした。

大江家には男の子が一人もなく、こどもは姫だけ。

大江家にとって、姫はたった一人の大切なこどもでした。

その頃の鎌倉は、武家やしきが建ちならぶ、物静かな町でした。

そんなやしきの中でも、大江家は立派な門構えの大きなおやしきだったのです。



姫が生まれた時、庭の桜が美しく咲いていたので、「小桜」と名づけられました。

やしきの広い庭には、桜・梅・椿など、たくさんの木が植えてあります。

その木へ、いろいろな小鳥がやってきます。


梅の花が何輪か咲き始めた春のある日。

「ホ…ホー…」

「ケキョ…、…ケキョ」

庭で小鳥が鳴いています。

「おとうさま、おとうさまー」

姫が、大声でおとうさんをよんでいます。

「おとうさま、あの鳥は何という鳥?」

「姫、うぐいすだよ。じき上手に鳴けるようになるから、そこで聞いていてごらん」

おとうさんがいいました。

「ホー…ケキョ、…ケキョ」

「ホーホ…、…ケキョ」

しかし、うぐいすはなかなかうまく鳴けません。

「うぐいすさん、がんばってぇ」

 姫は、心の中でうぐいすをおうえんしました。

「ホーホケキョ、ほーほけきょ」

しばらくして、うぐいすは上手に鳴けるようになりました。

「わぁ、いい声。うぐいすさん、じょうずに鳴けるようになってよかったね」

姫は、うぐいすに話しかけました。

うぐいすもうれしそうです。

姫のおとうさんは、小鳥が大好き。小鳥の鳴きまねもとても上手でした。

「姫、きてごらん。椿の木にめじろがきているよ」

庭へ小鳥が来ると、おとうさんは小鳥の名前を教えてくれます。

姫は、小鳥の名前や鳴き声を、自然におぼえました。

そして、小鳥たちと大の仲良しになりました。


夏のある朝。

「姫、姫―。きてごらん。朝顔の花が咲いたよ」

おとうさんが姫をよんでいます。

庭へでると、朝顔の花がたくさん咲いていました。

「わぁ、たくさんの朝顔!!」

姫は一つ・二つ・三つと、花を数えはじめました。


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