ふしぎな鈴




「かなさん、私は遠い国からあなたのおとうさんを迎えにきました。

これから、おとうさんは遠い国へ旅立ちます。

おとうさんは、あちらの国で、かなさんとおかあさんのことを、ずっと見守っていますからね。

では、これから出発します。かなさん、おかあさんのことを、たのみますよ」

そういうと、黄金色の鳥は、おとうさんを背中にのせて、どこかへとんでいってしまいました。

それはあっという間の出来事でした。

「黄金色の鳥は、あちらの国っていったけれど、あちらの国ってどこにあるのかしら?」

かなは、「あちらの国」ということばが、気になりました。



次の朝、かなは黄金色の鳥がとまっていた柱時計の上を、そっとのぞいてみました。

黒い種が一粒のっています。

「何の種かしら」と思いながら、かなはその種を白いふうとうに入れ、

机の奥にしまっておきました。

庭へでると、おとうさんが育てた朝顔の花が、たくさん咲いていました。

白い花も紫の花も、ピンクの花も咲いています。

「かな、みてごらん。朝顔の芽がでてきたよ。かわいいだろ」

「かな、つるがのびてきたよ」

「ほら、みてごらん。つぼみが三つもついたよ。もうすぐ花が咲くよ。楽しみだね」

朝顔の花をみていると、おとうさんの声が、なつかしく思い出されました。



おとうさんがなくなってから、百日がすぎました。

かなの村に、初雪がふりました。

初めちらちらふっていた雪も、いつの間にかぼたん雪にかわりました。

雪をみているうちに、かなは黄金色の鳥がおいていった

黒い種のことをふと思い出しました。

かなは机の奥から黒い種をだし、そっと手の上にのせました。

すると・・・。

「リーン・リーン・コロンころん」

「リーン・リーン・コロンころん」

どこからか鈴の音が聞こえてきました。

「かなさん、元気ですか。その種は、朝顔の種ですよ。

外へでて、雪の上に種をまいてごらん」

どこからか声が聞こえてきました。

「誰だろう?こんな雪の日に、種をまいても芽はでないだろうに」

かなは思いました。

「かなさん、おねがい。雪の上に、朝顔の種をおいてくださいな」

また声が聞こえました。

かなは外へでて、いわれたように雪の上に種をおきました。

すると・・・。

種がわれて、中からかわいい黄緑色の芽がでてきました。

二枚の葉が四枚になり、八枚になり、どんどん葉がでてきます。

そして、あっという間に、何万枚という葉になりました。

つるも空にむかってどんどんのびていきます。

つぼみも数えきれないくらい、たくさんつきました。

そして、あちらにひとつ、こちらにひとつと、花が咲き出しました。

赤い花も白い花もあります。

紫の花も、ピンクの花も咲き出しました。

何千何万という花が、色とりどりにぱっと音がして開いていきます。

色あざやかな竜が、空に向かってかけのぼっていくような、そんな感じでした。

かなはぽかーんとして、朝顔の花をみていました。

つづく


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